赤松明彦『サンスクリット入門 インドの思想を生んだ「完全な言語」』中公新書2812 2024.7.25 1300円
郵便受けに、ずっしりした重みを感じるamazonの封筒が入っている。開けてみたら
赤松明彦『サンスクリット入門 インドの思想を生んだ「完全な言語」』中公新書2812
だった。424頁でサンスクリット初級文法を日本語で学べる。全50課。
いや、凄い。いきなり、guṇaとかvṛddhiとか出てくるんですが、これって
Perry : A Sanskrit primer (1901)
だと、最初の方の発音の話じゃん。2回生が母音の階梯がなかなか理解出来なくて悩む奴。
あ、赤松さんは研究室の先輩で、わたしたちは伝統的に2回生の時にPerryでサンスクリット初級を学んだ。サンスクリットは印欧語だから、英語の教科書で学んだ方が何かと都合が良い、というのが、その頃の風潮だった。大体、サンスクリットの辞書は、英語かドイツ語かって時代だったし。今や、オンラインでサンスクリットやパーリ語の辞書が居ながらにして引けるんだから時代は変わった。
だから、令和6年の今、赤松さんのこの
サンスクリット入門
も
日本語でサンスクリットを学ぶ教科書
という立場で書かれている。赤松さんじゃないと書けない教科書だ。
もちろん、これまでにも日本語のサンスクリットの教科書はあるけど、
初級文法の例文をインド原典から拾ってくる
ものは、見たことがないし、サンスクリットの力がよほど抜き出ていないと出来ない。
まだ、全部に目を通してないのだが、見出しを見ただけでも
印度学徒の笑いのツボをついてくる
お洒落な排列だ。たとえば、
第14課 あの山は火をもっている。煙をもっていることから。—子音語幹の名詞(2)
どこの世界にいままで
Jayanta BhaṭṭaのNyāya Mañjali
の有名な文章を引用して
2語幹の-mat/-vat名詞
を解説するサンスクリット初級の教科書
が存在したというのだ! さすが赤松さん、凄い。
でもって
tat tvam asi
は第8課で、2人称を説明する例文に使われているんですよ。溜まりませんね。
Nyāya Mañjaliの文章は、インド哲学/仏教論理学研究では、最初に出てくる喩例で
あの山に火あり、煙あるが故に
というのが往年のバージョンである。これを元に論理を展開していくのが一つのやり方。あとは
貝と銀
空華
牛と非牛
とかいろいろありますがね、ええ。
わたしは論理学を勉強できるほど賢くなかったので、喩例は知っているけど、その展開の細かいところまでは学んでいない。
今日はささっと3課ほど目を通した。これから毎日
日本語で学ぶ楽しいサンスクリット初級
を赤松さんに導かれながら、勉強していこう。